認知症は予防できるのでしょうか
「人生100年時代」と称されるようになりました。
そして、年々増加する認知症の患者数。常々2025年には65歳以上のうち5人に1人が認知症になると推測されていましたが、その年を迎えました。
85歳を越えたら4割以上が認知症に、90歳を超えたら6割を超える方が認知症になるといわれています。この数字から分かるように、人は長く生きれば生きるほど認知症になるリスクが上がります。つまり、認知症は私たちにとって「人生のライフステージの1つ」とも捉えられます。一人ひとりが「いつかは認知症になるかもしれない」という意識を持ち、準備しておくことは、自分や家族が認知症になっても慌てずに済み、穏やかな生活を送ることにつながるのかもしれません。
認知症の治療・ケアは社会の大きな課題だといわれています。かねてから「新薬が出た」と話題にはなってきましたが、いずれも根本的な治療薬ではなく、いろいろと条件があって、皆が受けられる治療ではありません。
認知症をいかに予防するのかという問題は、世界中で注目される研究テーマです。世界的な医学誌ランセットの国際委員会が2020年に「認知症の12の危険因子」を発表し話題になりました。現代の医学では認知症を完璧に予防することは難しいですが、危険因子に対する対策・管理によって認知症の発症や進行を遅らせることは可能です。
ランセットのレポートでは、認知症の40%ほどは修正可能な危険因子によるものであり、それら12の危険因子を改善することで理論上は認知症のおよそ40%が予防可能としています。
12の危険因子のうち、予期しにくいものや環境的なものを除くと、ほかは主に生活習慣に関わるものです。
●血圧や血糖値、体重のコントロールはできていますか?
高血圧や肥満、糖尿病などの生活習慣病が危険因子になることが分かっているため、まずは生活習慣を改善してそれらの病気を予防すること、あるいは病気が分かった時点で早めに医師等に相談することが常に重要です。
●イヤホンやヘッドホンの使用を控えましょう
認知症と難聴に関係はあるのでしょうか?
12のリスク因子の中でも、特に気をつけてほしいのが難聴。
「難聴の人が認知症になるリスクは、そうでない人に比べ1.9倍高い」というデータがあります。難聴になると、周囲とのコミュニケーションがとりづらくなるので、会話に加わらなくなって脳への刺激が減るのは確かですね。60歳前後から聴力は明らかに低下しますが、近年、若い人の間でも聴力が低下している人が多く見られるようになっています。
イヤホンやヘッドホンを使い、大きな音量で音楽を聴き続けると、音を伝える役割をしている内耳の有毛細胞が徐々に壊れて難聴になりやすくなります。使用は控えた方がよいでしょう。やむなく使う場合は、音量に気をつけ、1日1時間未満に。